2015-10-25(Sun)

アニメーションスタジオ TRIGGER 大塚雅彦の演出講義 1回目について。

 お久しぶりです。相変わらず現行アニメは見てるけど感想とか書く元気もなく、死んだ目しながら生きてます。今季はハイキューと緋弾のアリアがいいですね…


 先日行われた大塚さんの演出講義に行ってきました。将来演出志望とかではなく、単純にお話し聞いてアニメの見方が広がればいいなという理由で参加しました。私が参加した回は3、40人中5人程度が現役演出もしくは演出志望の方だった気がします。ほとんどの人が自分みたいな考えで(単純に手が挙げづらかったから上述の人が少ないかもだけど)参加しているようだったので、今後参加したいと考えている人はそんなに構えず参加できると思いますぞ。

 レポOKということだったので、メモったもの整理しつつ内容を書いていきます。
 あ、ちなみに今回のテーマは「演出の仕事」ということで概要的な部分についてのお話が中心でした。演出とは~とか絵コンテの読み方とかからお話は始まり、作業工程の流れの中で演出の仕事について触れていく感じでお話されていました。

 メモの取り間違いや聞き間違い、解釈の間違い、私の理解不足な部分が多々あると思います。ご了承ください。ちなみに斜体の字は私が話し聞いてて思ったこととか微妙に関係ない感想です。


○演出とは
 主な演出の仕事は絵コンテ・処理が中心。絵コンテを元に各セクションを(現場的ポジションから受け持った話数を)監督する。
その中で重要なのが、作品について「なにをどう見せたいか」。演出によって方法論も目的も異なるため、大塚さんならこうする、ということが前提で講義は進む。

○絵コンテ
 なぜ絵コンテシステムが取られているのか。メリットとデメリットを挙げ、説明。
 
 絵コンテシステムのメリット
 ・作品の全体をコントロールできる。絵コンテに書いてしまえばそれが土台となるため、各セクションへの強制力となる。
 ・土台があることにより、不要な作業が減る。
  →実写の場合だと素材の2/3がカットされるのに対し、絵コンテシステムを取るアニメは98%の素材が使われる。
  →演出プランによってコストを予測することができる。
 絵コンテシステムのデメリット
 ・アイデアを出す人が演出だけになってしまいがち。
  →各セクションのアドリブが限られてしまう。そのため自分のアイデアを使いたい、と考えるセクションからは不満が出ることになる。
 ・絵コンテを書く人間の画力不足で、書きたいレイアウトを絵コンテで伝えることが出来ない場合がある。
  →原画マンによる作業の完成度にも影響してしまう。

 演出の立場として絵コンテを読む場合のポイントについて
 ポイントは以下3点。

 1,絵コンテを通して読む
   観客の視線となって、リアルタイムで放送していることを想定し、その速度で読む。
   →この読み方によって気になった点や、良いと思ったところ、悪いと思ったところをメモしておく。
 2,シーンを考えながら絵コンテを読む
   絵コンテ全体から焦点を少し絞り、各シーンごとの「テーマ」を伝えられるコンテになっているか確認する。この「テーマ」は作品内での問題提起等、作品の核心・重要な部分だけではなく、演出が考えた、そのシーンで見せたいところも含む。また、作品における「テーマ」を検討するときに、「テーマ」がきちんと機能するためにシーンごとの役割を考えた構成を意識することが大事。
   なぜそのシーンがあるのか、全体的な役割はどういうことか、確認する。
   →大事なことはシーンの終盤にあることを基本として、それを意識する。
 3,詳細を考えながら絵コンテを読む
   シーン単位から焦点を絞り、カット単位で具体的状況を考える。この読み方においては視聴者の見るスピードとは違うため、そのことを念頭にカットを読まなければ「木を見て森を見ず」な結果となってしまいがち。
   絵コンテを読みながらカットのテーマを考える。「顔を上げる」、「ボタンを押す」など、全体を見れば些細なことでも、カット単位で見るとそれがカット内での重要な目的となる。目的を実現するために、そして視聴者に伝えるために最善のプランを検討する。作業量をどう減らすか、どこにソースを割くか。
   →このカットは止めで対応できないか、なるべく少ない原画枚数で対応できないか…等の検討。
   →ここをじっくり考えられれば各セクションに要求することは最小限になる。各セクションの担当者は時間制限がある中での作業であるため、やりたい部分から取り組んでしまいがちである。そのため演出が優先したい要素がないがしろにされてしまう可能性がある。いかにここで省力化できるかを考えることが、最終的には演出の目的の実現につながる。

○作画の盲点 絵コンテから原画作業での注意点
 絵コンテには線画で描き込んで行くため、完成画面も線画として考えてしまいがちである。そのため作打ちできちんと話しておかないと、場面が昼か夜かわからなくなってしまうことがある。
 →色のイメージが具体的ではないまま作業が進んでしまうことが多い。演出の仕事の一つである「画面の色」について考えが行き届かなくなってしまう可能性あり。例としてセルとBGの光源がバラバラになってしまうこと等。夕景なのにセルが通常の影の落とし方になってしまっていたり…不要な手間が増えてしまう。光源については演出がコントロールしなければならない。

 レイアウトのチェック段階において、カットの割り方を再度整理する必要がある。
 カットを割るということは時間を割くということ。カットを切った時間は盗まれている。そのことを理解し、カット内の目的の実現を図る。例としてカットを割っても盗む時間を少なくすることによってダブルアクションっぽくする…等。逆にアクションを省くこと(時間を多く盗む)によって前後のカットが上手く繋がることもある。
 →コンテの尺は絶対ではない。しかしなぜコンテに記載した時間で尺を定めたのか、演出は理解し、必要であれば各セクションに設定した時間であることの意味を伝えなければならない。

○作業工程における演出の役割、作業について。

 1,打ち合わせ
   基本的にはコンテが完成した段階で各セクションとの打ち合わせを行う。前後する場合もあり。
   演出打ち…監督から演出が指示をもらう。
   作監打ち…演出から作画監督へ指示出し。
   美打ち…演出から美術へ指示出し。シーンごとの指示が多く、少し大きめな目線で伝える。
   色打ち…美打ちと一緒にやることもある。セル作業とのすり合わせが中心。
   撮打ち…演出から撮影への指示出し。
   打ち合わせにについては事前に具体的な指示を考えて、それを相手に伝えることが重要。各作業者はやりたいことに対し意識を持っていかれがちであるため、作業におけるバランスを明確に伝えることも重要。(…ここらへんで大塚さんから実務的なお話がった。一番熱がこもっていたように感じる…でもそれは割愛。)
 
 2,処理及びチェック
   演出が処理に費やす時間はとても多いが、絵コンテを書き、各セクションへ作業内容を説明することが終わった段階であるため、ほぼ後処理に近い。やってほしいポイントが出来ているかどうかの答え合わせ。
   →演出が考えた目的とずれた画面にならないか、演出が考える目的が達成されているかどうかチェック。
   →目的が達成されているなら合格点を広く持つことが大事。例えば銃を撃つことを目的としたカットであるなら、銃を撃つカットが横から撮った画面か、前から撮った画面かを重要視せず、目的が達成されているかどうかをチェックする…等
   どのカットでも共通して一番重要すべきことは「キャラの感情の繋がり」。動作の整合性(気になる・ならないにもよるが)よりも前に来る。視聴者の視線が集まるキャラの感情が最優先。視聴者の視線の中心がチェックの中心となっているか意識する。

 3,美術への対応
  美術に対してはレイアウトが最終的な指示出しとなるため、演出に伝えるべきことはレイアウトで要求する。
   →画面内の部分がセルかBGなのか、BGは何フレーム必要なのか・・等、素材への要求を明らかにする。
   →レイアウトには尺を書いておくこともポイントの一つ。担当するカットが何秒表示されるのか美術にはわからないこともある。美術が手間を掛ける度合いを勘定する基準にもなる。
 美術ボードの発注も色味の基準、セルの色の基準となるため、演出(または監督)の仕事ととなる。

 4,撮影及び編集
  撮影はスケジュールの問題から線撮になってしまうこと多し。細かい部分についても理解している演出が深くかかわらなければならないセクション。
  編集は実作業についてはほとんどセクションに任せる。尺の過不足時が演出の出番。決められた時間を3分以上オーバーする場合はカットに欠番を設けることもある。セリフを削るなどして対処する。
   →大塚さんが経験した中では7分オーバーなんてこともあった。(…グレンラガンの紅蓮篇だったかのコメンタリーでも似たような話をしていたような…曖昧)

 5,アフレコ
  キャリアが少ない演出の場合は黙ってみているだけの事が多い。細かい変更点等があった場合は、その話数を深く理解している演出の出番。キャリアを積んでいけば声優の芝居について口出しすることもできる。
  →声優は見た絵の通り演じてしまうことが多い。線撮等の不完全な画面で声優に演技をしてもらう場合、うまく場面の意図が伝わらないことがあるため、完成画面に近い素材を利用するべき。

 6,ダビング
  キャリアが少ない演出は黙ってみてるだけの事が多い。音楽をどこから流し始めるか等は音響監督が決定することがほとんど。この段階で色がついていないとSEが困る。
   →草なのかアスファルトなのかわからない…なんてこともある。そういった場合SEはどちらとも取れそうな音を使ったりして対処しているという。
   →画面がガラっと変わってしまうこともあるため、音響さんは線撮に対して不安感がある。以前、線撮段階ではロボットが飛ぶ画面であったため、飛ぶ音をSEにつけてもらったが、完成画面ではロボが走っていた…なんてこともあった。

 7,リテイク出し
   音響と平行してリテイクを出すことが多い。リテイク期間をきちんと取らないとクオリティコントロールができなくなってしまう。
    →リテイク期間は2週間程度あるのが理想的だが、実際は1日だけ、ということもよくある。


○Q&A 出席者から大塚さんへ質問及びその回答

  ・デジタル化等に伴い多様な作業が可能となった撮影、編集への負荷はどう変わっていってるか。
   アナログからデジタルになった段階で要求する内容が変わった。ボケの指示が簡易化された等、良い点もあるが、要求も増えているのが現状。
    →ボケの指示については、アナログの頃はとても大きい機材を用い、3段階程度でしかボケの表現を作れなかったが、今はソフトを使って簡単に10段階のボケを表現できるようになった。

 ・タイトなスケジュールについてよく耳にするが、タイトになってしまっている理由はなにか。
  原因は絵コンテ作業と作画の遅れが9割を占める。視聴者から求められる要求が上がり、その要求の中心が作画であるため、作業時間も増えてしまっている。
   →実際の予算やスケジュールに見合う作品を作ろうとすると『ニンジャスレイヤー』になる。現状のアニメ業界では予算オーバー、クオリティオーバーが常識となってしまっており、状況に見合う仕事は現在できていない。
   →業界内には質の面で強迫観念がある。視聴者に叩かれるのが怖いという強迫観念。その強迫観念によりスケジュールが荒れ、絵が荒れる…という悪循環になってしまうこともある。(作画リテイクで時間とられるんですかっていう質問も併せてあったけど作画リテイクはこの段階では滅多にないっていう回答があったような気がする。メモってないので不確か)

 ・プレスコのメリット・デメリットは。
  メリットは声優の演技において自由度が広がること。デメリットは作画の芝居を声優の演技に合わせなければいけない(例として強調するような演技を声優がしたため、作画での芝居を増やさなければいけなくなってしまった等)ため、作業量が増える可能性があること。
   →ニンジャスレイヤーは演技を声優の好きにさせることが多かったため、プレスコに近い。実際にプレスコ作業をしたこともあった。

 ・キルラキルでのスライドを多用したギャグ等はコスト面を考えてのスライド指示だったのか。
  コスト面よりも絵コンテ段階で演出が決めていることが多い。スライドを多用したギャグは作品内での「お決まり」として各話演出に認識されていたから多用されていたのだと思う。(…この話を聞いて『プリパラ』で首がアカベコみたいになるやつが演出さん内で「例のアレ」と呼ばれていることを思い出した)

 ・演出の作業によるクオリティ保持はどの程度可能か。
   演出の目的達成基準によってクオリティ保持の範囲は異なる。基本的には演出の考える最低限度のクオリティが保持されていれば良い。

   トリガーで現在ナンバーワン演出は雨宮さん。最低限の部分はきちんと抑えているので、ニンジャスレイヤーでも雨宮さん演出回は面白い。面白い作品、話数は最低限の部分を抑えているため、コンテ撮の段階ですでに面白い。
   最近では花とアリス殺人事件も面白かった。ロトスコとCGを使用し、作画に頼らない、岩井さんの演出力に比重をおいた作品になっていた。こちらも最低限を抑えた(=最低限の作画クオリティを維持した)良い作品である。(…ここで磯光雄さんの名前が出た。深くは関わってないみたいだけどー程度で終わる。ニンジャスレイヤーと花とアリスが一要素だけでも並べられて話していることにとても興奮する)

 ・トリガーで演出になるにはどうしたらいいか
  トリガーでは制作進行を2年以上経験するか、原画を1年以上経験することによって演出試験を受けられる。学ぶ機会はないため、作業内で身につけなければならない。作業内で学ぶ、ということはどのスタジオも同じだと思う。(…東映は演出助手として今もたまに募集してた気がするなあ…押井塾とかがピックアップされることも多いし、そういう場面が滅多にないことは確かだろうけど)



 以上。概要的なお話だったのでスルーしてもいいかなあとか思ってたけど行って良かったです。とても充実した2時間でした。特にコンテを読むって話と雨宮さんの話は大変興味深かったです。雨宮さんの話したあと花とアリスの名前が出た時は思わず笑ってしまいそうになったけど(失礼ですな。すみません)、その後続く説明で納得。演出さんの目的達成のために省く要素を作る、そしてそこが味になっているってのがわかる。ニンジャスレイヤーは特に。雨宮さんはすげえと話す大塚さんを見ながらニコ生での雨宮さんの姿を思い出して笑いそうにもなったけども(失礼ですな。すみません)。
 転載を避けるためにレジュメ等は配られなかったです。パワポも凄くシンプルだった。次回以降も同様かと。

 あ、 あと参考文献として 
 神村幸子『アニメーションの基礎知識大百科』
 撮ま!(http://satuma.grupo.jp/
 を大塚さんが挙げていました。『アニメーションの基礎知識大百科』は私もオススメしたいです。作画の要素(カメラワークについても)が絵付きで載ってるのでアニメーションの作業工程に関する理解が深まります。『アニメを仕事に!』は宣伝しないんすか…?とも思った。


 個人的には第二回の「アニメの芝居の付け方」と第三回の「カメラワークの設定と指示の仕方」がすごく興味があります。めちゃめちゃ楽しみだなあ。


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ざっかん

Author:ざっかん
アニメ『グランブルーファンタジー』に斉藤良成さんがメインアニメーターとして関わるようですよ。絶賛応援。

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